刀屋壱(カタナヤイチ)の海外ジャパンフェスツアー2024、最終地はフランス・パリの Japan Expo Paris(ジャパンエキスポ・パリ)でした。
1ヶ月半にもわたる海外ツアーは、2024年6月4日、トルコのブルサから始まり、アンカラ、スペインのバルセロナ、フランスのトゥール、スペインのビーゴを経て、最終地であるフランス・パリの Japan Expo Parisに到達しました。
Japan Expo Parisは、毎年7月上旬にフランス・パリで開催される世界最大級のジャパンフェスティバル(日本文化の総合博覧会)。今年は2024年7月11日から14日、4日間の動員数は25万人。出演者もすごい顔ぶれです。
Japan Expo is THE place to be for all fans of Japan and its culture, from manga to martial arts, from video games to folk culture, from J-music to traditional music: a must event for all those interested in Japan culture and endless discoveries for novices. And only 30 minutes away from Paris!
https://www.japan-expo-paris.com/en/menu/about-us_487/info/about-japan-expo_11331.htm
この巨大ジャパンフェスに今年も招待していただき、我々のサムライパフォーマンスを披露することができました。今年で6回目です。
ジャパンエキスポ・パリのステージ
刀屋壱は日本の伝統文化の殺陣(たて)のパフォーマンスするサムライチームで、毎年オリジナルのサムライショーを作っています。2024のツアーでは、伝説の侍、前田慶次が活躍する【慶次-CAGE-旅情篇】という新作を披露しました。トルコでの初演から公演数も10回を越え、作品的には熟成されました。
ジャパンエキスポ・パリには3つのステージがあります。ICHIGOステージ、SAKURAステージ、 WABISABIステージです。毎日舞台を変えて公演しました。4日間で6ステージです。今回は津軽三味線アーティストのNoriko Tadanoさんにも出演していただき、彼女のステージにも出演させていただきました。
ICHIGO ステージは収容人数が 15,000 人、日本の武道館と同等の規模です。誰でもこの舞台に立てるわけじゃないのですが、刀屋壱は毎年ICHIGO ステージで公演させていただいてます。今回は2日目に公演させていただきました。
SAKURA ステージは客席 1,300 席、立ち見を含めると 1,500 人です。4日間のうち3日はここで公演です。WABISABIステージは観客との距離が近くて、交流のできるステージです。WABISABIではサムライワークショップを行いパリの方々と交流させていただきました。
観客の見る目が肥えているジャパンエキスポ・パリ
ジャパンエキスポ・パリは、他のアーティストのレベルも高いですし、パリの観客は見る目も超えています。正直なところ、サムライや忍者はどこでもウケる。日本人の少ないところに行くと、見慣れてないからみんな楽しんでくれます。
でも、フランスはシビアです。観客は日本のコンテンツも見慣れていて、反応もダイレクトに返ってきます。良いパフォーマンスであれば観客が増え、拍手や声援も多くなります。足を止める人が増えて、ステージに人だかりができ、人が人を呼んで盛り上がります。逆にあまり良くないパフォーマンスの場合は観客が立ち去ることもあります。このリアルタイムのフィードバックが私たちにとって非常に貴重でした。
毎年海外のジャパンフェスに出演してますし、ジャパンエキスポ・パリも6回目です。だから、フランス現地に刀屋壱のファンがいます。みんな楽しみにしてくれていて、毎日反応はよかった。しかし、木・金・土の3日間の公演が終わったとき、満足できていませんでした。作品が安定しているが故に、「突き抜けていない」という気持ちが残りました。
舞台ではたまに「突き抜ける」瞬間があります。目の肥えたお客さんがスタンディングで拍手を送ってくれたり、声援がウワーと会場を包み込むような瞬間がある。心からの拍手です。今回そこまでいけてなかった。だから、もっと観客を沸かせたい、もっとできるという思いがありました。パフォーマーとして観客の予想を上回りたい。
1回目ならすごくウケていると思って満足していたと思います。だけど、もう6回目です。イベントに招待していただいてますし、もっとドカーンと会場を沸かしたい。3日間の公演が終わったときそう感じました。
実はロストバゲッジして刀を紛失しました。だから、自分たちの刀ではなかった。さらに、今年は音の規制が強くて、自分たちの理想とするボリュームで曲を流せなかった。我々の舞台は音楽やサウンドエフェクトが重要なので、そういう問題はありました。
ジャパンエキスポ・パリ 2024 最終日
最終日(7月14日)の前日にメンバーで話し合い、お互いを再度鼓舞し合いました。 何かのせいにすることなく、自分たちのパフォーマンスが突き抜けられるように、もっとお客さんを感動させるパフォーマンスをしようという気持ちで一致しました。主人公の前田慶次役をつとめる光希が盛り上げてくれました。チームリーダーとして責任感をもってやってくれました。
7月14日の最終日。初心に戻って挑みました。何が違うのか言葉にするのは難しいのですが、気持ちは違ったと思います。自分たちの納得のいくショーができました。
舞台では初日と最終日はよいパフォーマンスができることが多いです。毎回本気でやっているので、自分たちは違いはわからない。だけど、お客さんの反応が違う。おそらく、初日は緊張感があるので作品としては荒いけど、演者の気持ちがのっている。最終日は、みんなで舞台に立つのが最後だと思って気持ちが入る。そして、いい作品になることがあるんだと思います。フランスの最終日は最高の舞台ができました!
お客様の反応もよかった。私たちのショーを毎日観ていたスタッフも「今日はさらに凄かったね!」と声をかけてくれました。
役目を果たした。これで胸を張って日本に帰れると、安心しました。
フランス・パリでは過去最大のトラブルがあった
今回は海外ツアーはトラブル続きでした。2024年7月9日、私たちはスペインのビーゴからマドリードを経由してフランスのシャルル・ド・ゴール空港 (CDG)に到着しました。このとき、これからトラブルが起きるとは思ってもいませんでした。
予定通り22時20分に到着し、事前に予約していたレンタカーのカウンターに24時までに向かうべく急いでいました。
CDG空港で刀がロストバゲッジ
預け入れ荷物のスーツケースを全員が受け取ったとき、オーバーサイズ荷物として預けていた刀ケース(全員分 12本)が見当たりませんでした。あたり一帯を探しても見つからなかったため、係の人に相談し、ロストバゲッジの申請をしました。「翌日の夕方には指定住所に届ける」と、係の人に言われたので、2日後の公演にはなんとか間に合うと思いました。
申請を終え、急いでレンタカーの受付に走りましたが、24時を過ぎていたため受付は閉まっており、予約していた車を借りることができませんでした。借りていた Airbnb のアパートは 空港から車で40分の場所、夜も遅かったので、仕方なくタクシー2台でアパートに向かうことにしました。
翌日7月10日は Japan Expo の会場でリハーサルでした。ICHIGO ステージ、SAKURA ステージ、WABISABI ステージでリハーサルを行いましたが、刀がないので集中できませんでした。
リハーサル後、Japan Expo の会場で駐車場代を払いました。4日間の2台分で 160€。そして、前日借りれなかった車を借りるため空港のレンタカー受付にまた向かいました。
レンタカーを借りられない
レンタカー受付で「7月9日から7月16日まで 2 台予約していて、全額支払済みです」と伝えたものの、受付の人からは「今日は7月10日だから貸せない」と言われました。話にならなかったので、友達のフランス人に電話し受付の人と話してもらいましたが、結果は変わらず、借りることができませんでした…。
レンタカー代 350€、駐車場代 160€が無駄になってしまいました。8万円ちょっとです。アパートからJapan Expo の会場までは車なら30分ですが、電車だと1時間20分かかります。以前パリの電車で2回スリにあったことがあるので、4日間の会場への移動はタクシー2台で行くことにしました。パリは物価が高いので予想外の出費でした。
刀ケースの紛失
7月10日の夕方になっても刀ケースは届かず、他の殺陣のパフォーマーにお借りすることになりました。刀ケースは最終日まで届かず、最終的には紛失という結果になったので、今回の公演中は、他の殺陣のパフォーマーの百鬼夜行さん、和茶さん、小坂逸さん、かむゐさんに日替わりで刀をお借りしました。本当に感謝しています。
ただし、主人公である前田慶次の槍は朱槍である必要があったため、他の殺陣チームに借りることができませんでした。
リハーサル後に必死に槍の代用品を探して、近くの服屋に赤い物干し竿を見つけて、なんとか1日だけ貸していただくことができました。なので、初日は物干し竿の先端に銀のテープをまいて朱槍にしました(笑)。
「物干し竿がないと洗濯物が干せなくて困る」と言われていたので、初日公演が終わった後、すぐに返却して、ホームセンターへ行き、自作することにしました。
主人公の光希が「槍は自分で作りたい」と言うので、作り方は事前に教えていました。自分たちでホームセンターに行って作ってました。苦労はしたものの 出来栄えはとても良かったです。
公演中に槍が折れる
トラブルは次から次へと起こるもので、本番 3 日目のパフォーマンス中に私の蹴りが前田慶次の朱槍に当たり、折れてしまいました。本番が終わって 再度ホームセンターに行き、同じ材料を買ってもう一本前田慶次の朱槍を自作しました。
刀屋壱 海外ジャパンフェスツアー2024まとめ
いろいろありましたが、ジャパンエキスポ・パリの公演を無事に終えることができました。ロストバゲッジで全ての刀を紛失して、出演を辞退せざるを得ない状況でした。そんなトラブルを乗り越えるなかでチームの結束も強くなりましたし、振り返ればよい思い出となりました。刀を借りるために尽力してくれた Japan Expo のスタッフの皆様、快く刀を貸してくれたアーティストの皆様(小坂逸さん、Samurai Artist KAMUI さん、百鬼夜行さん、和茶さん)、本当にありがとうございました。
2015年に初めて海外進出をして今年で9年目です。海外の旅も昔に比べて随分慣れてきました。これまでもトラブルはいくつかありましたが、今回はこれまでの歴史の中で最大のトラブルでした。刀で表現するのに、刀がなくなってしまって、本当に困りました…。
ただ、たくさんの人が助けてくれて、そのおかげでご縁が深くなりました。海外のジャパンフェスで公演するようになってもう長いです。オーガナイザーの力を借りずに何でもできるようになってきてました。だから、本来なら我々がみんなをサポートする立場です。強がっていても自分たちでは何ともならない状況ってこの先もあると思います。そういうときは素直に助けを求めたい。そして、周りで困っている人がいたら、手を差し伸べてあげるチームでありたいと思いました。
皆様の応援のおかげで、今回の海外ツアーでも素晴らしい経験をすることができました。これからも刀屋壱の活動を応援よろしくお願いします!
パリでの公演は、ジャパンエキスポ・パリの公式チャンネルにアップされています。ぜひ見てください。
Japan Expo Paris 2024 公式フォト
オフショット
出演の依頼はこちら