2025年10月の東京アクション道場は、内堀克利先生をゲスト講師にお迎えしました。2回目のご登壇となる今回は大人クラスのみ、75分×2セットの熱いレッスンでした。参加者は7名、多くは殺陣歴1年未満の生徒でしたが、世界陸上のプロステージにアンサンブルとして出演したばかりの生徒が3名おり、道場全体が高いモチベーションに包まれていました。
殺陣を学ぶための共通言語は日本刀のパーツ
レッスンはまず座学からスタート。内堀先生は、日本刀のパーツの意味について約30分かけて丁寧に説明されました。

殺陣の指導では、「鍔迫り合い」などの専門用語が飛び交いがちです。しかし、各パーツの名称とその意味を深く理解していれば、指導者側の説明もスムーズに生徒の皆さんの理解に繋がります。これは、殺陣の世界を学ぶための「共通言語」を学ぶ、非常に重要な時間でした。
座学の後は、居合刀を使った抜刀と素振りの練習です。普段私たちが使う模造刀は木製で軽いのに対し、1キログラム近い居合刀はかなりの重さがあります。刀が変わるだけで、普段の何気ない動作一つひとつが持つ意味が全く変わってくることを、初めて居合刀を振る生徒たちは体感していました。様々な感覚を体験することの大切さを改めて実感します。
私は外国人旅行者に説明するときは、刀の構造について説明しますし、居合刀も持たせますが、アクションを学ぶ日本人生徒にも、このような経験は大切だと感じました。
相手が怖いと感じる「青眼の構え」
次に木刀に持ち替え、「青眼(せいがん)の構え」の解説に入りました。青眼の構えは流派によって解釈が異なりますが、内堀先生の解説で特に腑に落ちたのは、「相手に対面したときに、鍔(つば)と切先(きっさき)が一点になる位置で構える」という点です。

先生は「この方が怖くないですか?」と問いかけられました。一点に集約されることで、相手は刀の長さや初動を悟りにくくなり、それが「怖さ」に繋がるというわけです。先生は、これを左目にあてがうのがご自身の解釈だと説明し、さらに相手との距離が変われば、それに合わせて構えも変化するという実践的な解説も加えてくれました。
殺陣の真髄を掴む「究極のじゃんけん」
レッスンの終盤、殺陣の肝であるテンポ、タイミング、声の出し方を学ぶ、ユニークな「じゃんけん」レッスンが行われました。

刀を持つと、余分な力みが出てしまい、殺陣の全体的な流れや間合いが掴みにくくなります。そこで内堀先生は、刀を持たず、ルールを決めたじゃんけんを殺陣のシナリオに見立てて反復練習をさせたのです。
殺陣に必要なテンポ、タイミング、声…ほぼすべてが詰まった究極のじゃんけんです。じゃんけんで気軽にやりながら反復練習。タイミングと間合いの感覚を掴んだあとは。その感覚をそのまま殺陣へ応用!

この練習には、殺陣に必要なテンポ、タイミング、間合い、そして声、そのほぼすべてが詰まっていました。じゃんけんで気軽に反復練習を重ね、その感覚を掴んだ後、殺陣に応用するのですが、刀を持つと途端に余分な力みが出てしまい、じゃんけんで掴んだスムーズな感覚が失われる生徒が多かったです。この「刀を持つと余分な力みが出る」未熟さを、全員が認識する場となりました。
殺陣指導者としての哲学を学ぶ
長時間のレッスンでしたが、実際の殺陣シーンの練習は少なかったです。内堀先生は「皆さんが殺陣ができることは知っているけれど、今日はできることを封印して、最も大事なことを伝えたかった」と語られていたのが印象的です。
舞台役者でもある内堀先生のレッスンは舞台での殺陣をイメージされていると思います。舞台では声を出すことが大事です。本番前の稽古のときは「声を出して!」というけど、普段のレッスンでは、テクニックによりがちで、声を出すとか、心を解放するようなことはあまり伝えてないです。今回、生徒たちは普段より気持ちが入っていたし、大きな声を出して練習に臨んでいました。シンプルなことを反復させても、生徒を飽きさせない構成力は流石でした。

内堀先生は、武術家の先生方から知識を得ながらも、それをそのまま伝えるのではなく、ご自身の中で深く落とし込んでから「自分の言葉」で説明することを強く意識されているそうです。その言語化能力の高さと、指導者としての哲学は、同じ業界の仲間である我々にとっても、深く学ぶべきものでした。

今回のレッスンは、生徒の皆さんも満たされた様子で、濃密で実りのある時間でした。殺陣業界が次世代へ正しく継承されるよう、私たちも内堀先生と共に切磋琢磨していきたいと思います。
当たり前のことを当たり前に伝えることの大切さを学びました。意識していきます。ありがとうございました。
⚔️今月の東京アクション道場
— 殺陣教室 壱童 (@ichido2016) October 19, 2025
10月は内堀さんがゲスト講師として登場🔥
殺陣に必要なテンポ、タイミング、声…ほぼすべてが詰まった“究極のじゃんけん”✊でタイミングと間合いの感覚を掴み、
その感覚をそのまま殺陣へ応用⚔️
大の大人たちが本気で白熱していました🔥#殺陣 #アクション #サムライ pic.twitter.com/qwxs7EPYSZ

殺陣師・内堀克利
殺陣集団「10・Quatre(テンカトル)」の代表を務める殺陣師です。日本大学芸術学部映画学科を卒業後、21歳から殺陣の指導・振付を担当し、多くの作品に携わってきました。10・Quatreの舞台公演では、殺陣の振付のみならず、脚本や演出も手掛け、観客を魅了するパフォーマンスを創り出しています。また、芸能プロダクションや専門学校で殺陣講師として後進の育成にも力を入れています
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