舞台『千姫』誕生の舞台裏──世界陸上特設ステージでの挑戦

世界陸上の特別ステージ「TOKYO FORWARD 2025 for 世界陸上」

水野です。舞台「千姫」、世界陸上の特設ステージで3回の公演を終えました。素晴らしい舞台をつくることができましたが、そこに至るまでは決して平坦な道のりではありませんでした。

舞台「千姫」ができるまで

私たち刀屋壱は、毎年新作舞台を制作し、海外で披露しています。2025年は、4月のクロアチア公演では新作が間に合わず「慶次」を上演しましたが、6月のフランスとスペインでは新作「花魁」を披露し、大好評をいただきました。

「日本でもぜひ上演したい!」その思いから、9月の世界陸上では「慶次」と「花魁」をそれぞれ披露する予定でした。ところが、慶次はメンバーが揃わず、さらに花魁は「世界陸上ではNG」との連絡が…。しかも本番まで残り1か月半というタイミング。

無難にいくならキャストを入れ替えて「慶次」をやるべきでしたが、どうしても今年の新作を見せたかった。そこで花魁をベースに新しい舞台を模索。脚本家の上田郁代さんに無理をお願いして修正を進めました。世界陸上の特別ステージ「TOKYO FORWARD 2025 for 世界陸上」のテーマは「江戸」。そのテーマを意識して調整を重ねるうちに、作品は新しい舞台『千姫』へと生まれ変わっていきました。

脚本の遅れにより稽古開始も遅れ、最初の稽古は8月19日。本番の9月13日まで3週間ちょっとしかありませんでした。最終回は主役の都合が合わず、主役2人が交代するダブルキャスト。アンサンブルには殺陣教室の生徒4人が参加しましたが、初舞台のメンバーもいて挑戦の連続。

花魁はキャスト5人でしたが、千姫はアンサンブルを含めて12人なので、稽古の日程調整も大変。タイトなスケジュールにくわえ、京都や山梨など遠方から通うメンバーもいてアンサンブルもなかなか揃わない状況。それでもみんなの熱意はすばらしく、練習を重ねるごとに舞台の完成度があがっていきました。

完成した『千姫』は、徳川家康の孫・千姫の物語です。彼女は徳川家と豊臣家を結ぶために豊臣秀頼へ嫁ぎました。当時の結婚には女性が「取引」のように扱われる側面があり、女性は政治に利用される立場にありました。戦国時代から江戸へと移り変わるそんな時代を生き抜いた千姫の強さを描きました。

キャスト

千姫

せんひめ

百合香(千姫役)
百合香(千姫役)13日、17日出演
清水彩 (千姫役)
清水彩 (千姫役)20日出演
NINA(幼少の千姫役)
NINA(幼少の千姫役)

この物語の主人公。徳川家康の孫娘であり、秀頼の正室。政略結婚のために大阪城へ輿入れするが、大阪の陣で落城する城から救出される。

豊臣秀頼

とよとみ ひでより

過能光希(秀頼役)13日、17日出演
隈本秋生(豊臣秀頼役)
隈本秋生(秀頼役)20日出演
ARATA(幼少の豊臣秀頼役)
ARATA(幼少の秀頼役)

豊臣秀吉の子。天下統一を成し遂げた豊臣家の後継者として、大坂城の主となる。徳川家康との対立の末、大坂の陣で敗れ自刃する。

井伊直孝

いい なおたか

水野大(井伊直孝役)
水野大(井伊役)

徳川四天王の一人、井伊直政の次男。大坂の陣では徳川軍の中心的な武将として活躍。秀頼の最期を確認した一人

坂崎直盛

さかざき なおもり

久米(坂崎直盛役)
久米(坂崎役)

徳川家康に仕え、関ヶ原の戦いの功績で津和野藩主となる。大坂城落城の際、千姫を救出したと言われている。

大野治長

おおの はるなが

神﨑飛鳥(大野治長役)
神﨑飛鳥(大野役)

豊臣家の家臣。大阪の陣では豊臣方の責任者として秀頼を支えるが、落城の際に秀頼を庇い討ち死にする。

すず

虹美(鈴役)

千姫の付き人。千姫をよく知る、姉妹のような身近な存在

狐面の影

堀川恵利
大久保藍
紫希茜音
カズピー
織田桜
前田将吾

徳川・豊臣の若き兵や狐面の黒子、侍・ときに忍者。この物語において多くの影をつとめる。

TOKYO FORWARD 2025 for 世界陸上

今回のステージは「TOKYO FORWARD 2025 for 世界陸上」。2025年9月13日(土)から21日(日)の世界陸上の期間にあわせて国立競技場の外で行われた野外イベントです。

TOKYO FORWARD 2025 for 世界陸上 刀屋壱のステージ

我々は「Edo Tokyo & Japan Stage」で、13日(土)、17日(水)、20日(土)の3回ステージをやらせてもらいました。20日は主役の2人が変わったので、また違う雰囲気の舞台になりましたが、それぞれに見どころがあったと思います。初めて観に来てくれた方も多く、千姫に感情移入して涙する姿もありました。

ただ、天候にはあまり恵まれませんでした。14日は曇り、17日は猛暑、20日も曇り空。特に20日は雨予報で、今にも降り出しそうな空模様でしたが、本番中はなんとか持ちこたえてくれました。

ラストシーンで千姫が歩き出し、「狐の嫁入り」のナレーションが流れた時、霧雨が舞い始めて、舞台にぴったりの忘れられない光景になりました。その後は大雨になってしまい、来てくれた方々に直接ご挨拶できなかったので、この場を借りて感謝を伝えたいと思います。

ありがとうございました。

2025年9月13日

舞台千姫

2025年9月17日

舞台『千姫』20250917

2025年9月20日

舞台『千姫』舞 20250920

唯一無二のパフォーマーを目指す

世界陸上のようなイベントに呼ばれるのは「劇団」ではなく「パフォーマー」です。劇場の公演のようにチケットを買って最初から最後までじっくり見てもらえるわけではなく、オープンスペースで通りすがりの人に興味を持ってもらわないといけません。だから劇場よりも派手さが必要だし、大きなリアクションも大事になってきます。

正直、通りすがりの人にストーリーを伝えるのは難しい。しかし、我々はストーリーを大事にしたい。圧倒的な殺陣パフォーマンスはもちろんのこと、演技にもこだわりたい。立ち止まって引き込まれてしまうようなパフォーマンスこそが刀屋壱が目指すべきところ。それが唯一無二の強みで、さらに磨いていくべきものだと改めて実感しました。本当にいい作品になったと思います。胸を張って「自信作です」と言えます。次回作にも期待していてください。

Xの口コミ

イベントの様子がわかる口コミをご紹介します。すべてはお伝えしきれませんが、ご了承ください。

舞台裏

舞台「千姫」キャスト 9月13日
2025年9月13日 (土)
舞台「千姫」キャスト 9月17日
2025年9月17日 (水)
舞台「千姫」キャスト 9月20日
2025年9月20日 (土)

これからも人々の心に響く舞台を作っていきますので、応援よろしくお願いします。

by HarmoNyx
世界陸上の特別ステージ「TOKYO FORWARD 2025 for 世界陸上」

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